揉めると厄介なのが相続です。
「我が家は家族が円満なので相続で揉めたりする訳がない」と誰しも思っていると思います。
でも、それだったら揉める事例がこれほど起こるとは思えないです。

 

そして揉めた事例の8割は遺産の総額が500万未満のケースです。

 

ご自身・ご家族のご不幸の後に揉め事を残さないために遺言があった方がご意思を正しく伝えるために良いのではないでしょうか。

 

法定相続人と言う用語

 

遺言を残さず(遺産を残す方の明文化された意思表示がない場合)に亡くなった方の遺産を民法と言う法律で誰にどの様に引き継ぐのかが決められています。
それが法定相続人の意味と理解しています。

 

法律で決める前に揉めた事があったんでしょうね。

 

法定相続人

 

あまり知られて無い事かも知れませんが法律では以下の様に記載があります。
・胎児は法定相続人(死産だったら権利消失)
・遺産を残す方の配偶者の連れ子は法定相続人ではない(実子と分け隔てなく愛してるかどうかは関係ない)
・遺産を残す方の聞いたこともない愛人の子供も法定相続人
・養子も法定相続人
・先妻の間の子供は後妻の方が亡くなった時の法定相続人ではない
・内縁の配偶者は法定相続人ではない
・配偶者は常に法定相続人

 

上の法定相続人ではない方に遺産を残すための解決方法は「養子縁組」か「遺言書の作成」です。
それと遺産を残す方の聞いたこともない愛人の子供に遺産を残さないなどのための解決方法は「遺言書の作成」です。

 

甥・姪が法定相続人になる場合もあります。(代襲)
公営住宅の借主が亡くなった場合の公営住宅の契約は相続対象ではありません。

 

揉めるケースの一例

 

亡くなった方に配偶者がなく、お子さんが二人いらっしゃいました。
亡くなった方の遺産は、土地・建物・家電家具・預貯金でした。

 

法定相続人である二人は法定相続割合である通り、均等に分割する事にしました。
さて、預貯金を除く土地・建物・家電家具をどう均等に分割しますか?
冷蔵庫は全く同じ使用状況のものが二つあったりしないと思います。

 

土地・建物を分割するにも物理的に分割すると日当たりだったり間取りだったりが違います。
それでは共同名義にしますか?お二人のお子さんも生物である以上は、いずれは必ず亡くなります。
そのお子さんが皆さん等しく善良で仲良しとは限らないかも知れません。
そしてそのお子さんのお子さん(お孫さん)の代ではどうでしょうか。
皆さん仲良しであっても、代が下れば聞いたこともない愛人の子供が。。。

 

いつか揉めそうですね。

 

だったらご自身やご家族のためにも意思表示は明確にしておいた方が良いのではないでしょうか。
意思表示の一つである「遺言書」にも法律で定められたルールがあります。
ルールから外れた遺言書は無効になってしまいます。

 

遺言書について

ご自身が亡くなった後に遺された方々がご自身の残された遺産で争うのは悲しいことだと思います。それがご自身の親族の方なら猶更です。
残されたご遺族の方たち、特に相続をされる方たちの遺産に関わるご負担を軽減するため、ご自身のご遺族の方に対するご遺産に関するご意思の表明のためにも遺言を残されるのは大切な事だと思います。

 

遺言を作成しておくメリット

・ご自身の希望通りに財産を相続人に引き渡せる
 例:長年連れ添った配偶者に、財産の全部を相続させたい
・遺産分割協議書を経ずに財産の分配が可能になる
 遺産相続では、基本的に「相続人全員」が遺産相続に関して遺産分割協議を行います。その中で「相続人全員の合意」を経て、実際に遺産の分配が行われます。
 例:音信不通の相続人が居たりすると手続きがストップしたりしてしますかも知れません。
 しかし有効な遺言書がある場合にはその内容に基づいて相続の手続きを行うことができます。

 

 また、その際には遺言執行者が指定されていればさらに手続きがスムーズに進みます。

遺言の種類による違いや、メリット・デメリット

自筆証書遺言

・メリット
 費用がほとんどかからないので手軽に書ける。(実質330円で作れる)
 遺言を作成したこと及びその内容を他の人に知られない様に出来る。

 

・デメリット
 遺言の実現が不確実
 遺言を見つけた遺族は、家庭裁判所に検認の申し立てが必要
 検認をしないで遺言を執行すると、5万円以下の過料に処せられる
 遺言の方式に不備があると無効になる可能性がある
 「全文自筆」は年齢によっては、なかなかハードルが高い

公正証書遺言

・メリット
 公証人があらかじめ方式や内容の実現可能性を確認するため、確実に遺言を残すことができる
 公証人が遺言者の遺言能力の有無を確認するので、この点について後ほど争われる可能性が低い
 開封時の家庭裁判所の検認が不要
 遺産分割協議が不要になる
 原本が公証人役場にほかんされるので改ざん・紛失の恐れがない

 

・デメリット
 公証人手数料がかかる
 作成時のコストがかかるため気軽に再作成(内容の変更)ができない

 

当事務所では公正証書遺言を推奨しております。上記に記載した通りのメリット・デメリットが存在しますが、交渉証書遺言の方がメリットが多く、デメリットが少ないのが理由です。

 

公証人遺言作成の流れ

当事務所が推奨している公証人遺言の作成の流れを記載します。

 

・遺言者が公証人と証人に遺言の内容を話し、公証人がこれを筆記する
・公証人は、記録した文章を遺言者と証人に読み聞かせるか、閲覧させるかなどして、筆記の無い様に誤りがないかを確認し、遺言者と証人の署名・捺印を求める
・その証書を法律に定める手続きに従って作成されたものである旨を付記して、これに公証人が捺印署名する

 

ちなみに2023年6月27日現在の公証役場への手数料は以下となります。
  (遺言する財産の価額)(公証人手数料)
       100万円まで 5,000円
       200万円まで 7,000円
       500万円まで11,000円
      1,000万円まで17,000円
      3,000万円まで23,000円
      5.000万円まで43,000円
       一億円まで43,000円

 

一億円を超える場合も定められていますが私が受けることはなさそうなので割愛させて頂きます。

 

ちなみに上記の金額には以下の点に注意が必要です。
・財産の相続を受ける人ごとにその財産の価値を算出し、それを上記基準に当てはめて、その価額に対応する手数料額を求め、その手数料合算して当該遺言書全体の手数料を算出します。
  例:遺産総額1,000万円 法定相続と仮定すると配偶者一人(1/2)、子供2人(1/2の1/2ずつ)
   ・配偶者500万円11,000円
   ・子供A250万円11,000円
   ・子供B250万円11,000円
 合計33,000円

 

・遺言加算と言って、全体の財産が1億円以下の時は、上記に加えて11,000円が加算されます。
・公証人に出張(病院とか自宅とか)してもらう場合には、日当・交通費などが別途かかります。
・公証遺言の作成を行政書士などに依頼した場合には、更にその費用が掛かります。

 

相続についての遺言人(遺言を作成する方)への確認事項

・節税を主体としたいのか(税理士さんにご相談下さい)
・相続をスムーズにしたいのか(当事務所などの行政書士にご相談下さい)

 

各方式の遺言書作成

・自筆証書遺言作成の流れ

 遺言者との面談、遺言内容のヒアリング
 作成資料の収集
 案文作成
 依頼者への内容の最終確認
 案分お渡し・自筆での作成
 出来上がった遺言のチェック
 納品

 

・公正証書遺言作成の流れ

 遺言者との面談、遺言内容のヒアリング
 作成資料の収集
 案文作成
 公証人への案文・作成資料の送付、作成場所の連絡、見積依頼
 公証人からの案文チェック
 依頼者への内容の最終確認
 作成日時調整
 遺言書作成(証人立ち合い)

 

遺言執行について

遺言執行に際しては法律事務も多分に含まれることが多く、専門職の人間が執行者となることが望ましいと思います。
公正証書遺言作成の場合は指定されている場合がほとんどだが、遺言執行者の指定があれば相続発生後の相続手続き(特に各種財産の名義変更・解約等)が非常にスムーズになるため出来るだけ指定しておいた方が良いと思います。

 

遺贈について

遺贈は相続者全員の承認が必要なので「相続人以外への遺贈(例えば愛人への)」は相続者が承認を行う可能性が低いから遺言執行者を立てておく方が遺言執行が遺言人(遺言を作成する方)の意思を実現するのはスムーズです。

 

遺言書を作成しておいた方が良いケース(詳細)

・遺産相続で争いにしたくない
・相続手続きにかかる時間や手間と精神的な負担を軽くしてあげたい(遺言執行者の指定など)
・夫婦の間に子供がいない(遺言人(遺言を作成する方)の親や兄弟姉妹が法定相続人になる)
・配偶者以外との間に子がいる(前婚時の子または愛人との子)
・内縁の妻、息子の嫁、孫など法定相続人以外に財産を与えたい
・相続人同士の仲が悪い、または行方不明者が居る
・海外在住者(永住者)が居る
・家が自営業(個人事業主)である(事業承継を考えると)
・遺産分配の方法や割合を指定しておきたい
・相続人の人数や財産の種類、金額が多い
・配偶者(夫または妻)がすでに他界している(相続人が子だけになる。親の意見が無いので争いになりやすい)

 

清算型遺言

遺産を換金して、相続人等へ金銭で分配するタイプの遺言です。(一部の財産だけの指定も可能)
金銭で相続人に分配できるので非常にスムーズなのですが、遺言執行者が単独で行う場合でも関連する機関が不慣れな事が多いので換価が滞る場合が容易に想定されます。
特に不動産売買に関しては関連する他士業も多く事前に実施しておいた方が良いこともあるため清算型遺言を実施する上では注意が必要です。

 

と、ここまでが遺言についてのお話です。

 

また、亡くなった方のご遺族の間で合意された内容を明文化したものが「遺産分割協議書」です。

遺産整理業務(遺産分割協議書の前後の業務)

近しい方が亡くなるのはとても悲しいことです。それが親族の方なら猶更です。
ただ、残されたご遺族の方たち、特に相続をされる方たちには悲しんでる暇がないほどの相続手続きが発生します。

 

最も主要な相続手続きである遺産整理業務についてご説明いたします。

 

遺産整理業務の大まかな流れ

・当事務所との面談
・相続人調査
・財産調査
・遺産分割協議書の作成
・各種財産の名義変更手続き(不動産登記は司法書士さんのお仕事です)
・財産の分配

 

面談

ご家族の構成や財産についてお聞きいたします。

 

ポイントは以下になります。
・相談されている方の住所・氏名・連絡先
・相続関係
・遺言書の有無
・被相続人(亡くなった方)の最後の住所・本籍・生年月日・死亡日
・相続財産(詳細は別途調査しますがご存知の範囲で)

 

相続人調査

被相続人の死亡から出生まで遡った全ての戸籍を収集します。
戸籍を何度か移されているのなら空白期間が無い様に全て収集します。

 

行政書士は「職務上請求書」を使う事が出来るのでご遺族の委任がなくても全ての戸籍を収取できます。
(これは強力すぎる職能なので相当に気を付けて使う必要がありますが)

 

集めた戸籍から相続関連説明図を作成します。

 

財産調査

面接時に伺った内容や実態に沿って以下の財産の調査をします。
・不動産(宅地、建物、農地、森林など)
・預金
・株式
・保険
・乗用車/軽自動車

 

不動産については登記情報を集め、預金については残高証明書を取得し、株式・保険についても調査して整理します。
調査結果を財産目録にまとめます。

 

遺産分割協議書の作成

相続人調査により「誰が相続人か」が定まり、財産調査により「相続手続きをすべき財産」が定まります。
後は財産目録などの資料を参考に相続人間で遺産分けのお話合いをしていくことになります。
行政書士は民法を始め関連法規の知識を使って、可能な限りのご質問へ回答いたします。
ただし、他士業分野のお話はお預かりして問い合わせ後に回答させて頂くことになります。

 

決まった内容を基に遺産分割協議書を作成し、ご確認頂きます。
各相続人から最終的な確認が取れたら署名・押印等を頂きます。

 

この協議書は財産の分割前でしたら何度でも作り直せますが、分割後には贈与認定されますので「いったんこの人に集めておいて後でゆっくり考えるか」は贈与認定されることも踏まえてお決め頂ければと思います。

 

その後の手続き

土地の登記は司法書士さんのお仕事ですが、役所に提出する書類(行政書士の業務範囲)は結構あります。
また銀行・証券会社などへの手続きも必要書類(相続人特定に必要は戸籍一式、相続関連説明図、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明)などがあり、大変です。

 

その他、自動車・軽自動車の名義変更(分けて書いているのは提出先が違うからです)、農地の相続届け、土地改良区の組合員資格得喪通知書の提出、森林の土地の所有者届け、固定資産納税義務者の変更届などがあり、それぞれに添付書類がありますので書類の束と戦うことになりかねません。

 

まして、一生に何度も行う機会がない調査や届出を行うのは同居の親族の方でも大変でしょうし、別居で資産の状況も良くわからないなら猶更大変なことになるのは想像に難くないでしょう。

 

相続についてご不安を持たれている方はお気軽に当事務所にご相談下さい。

 

ただし、遺産で揉めたら行政書士ではなく弁護士さんにご相談下さい。
また、相続放棄は3か月以内に家庭裁判所へ申述が必要です。こちらは行政書士ではなく司法書士さん、または弁護士さんにご相談下さい。

 

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